「仕事で同じミスを繰り返してしまう」
「もしかしてうちの子は発達障害かもしれない」
このような悩みを抱え、発達障害の検査や診断の流れについて調べている方は少なくないでしょう。
この記事では、発達障害の診断を行う際に実施される心理検査の種類や費用、医療機関での流れ、さらに大人に見られやすい特徴についても解説します。
※発達障害の「診断」は医師のみが行うことができます。
公認心理師・臨床心理士は、心理検査を通して特性を把握し、支援方針を考えるための評価を担当します。
発達障害の診断に使われる心理検査とは?
発達障害の診断においては、医師による診察・問診と、公認心理師などによる心理検査を組み合わせて評価を行います。
発達障害に関する心理検査は、発達の特性や認知の傾向を客観的に把握するために行われます。
どのような情報処理を得意とし、どのような場面で困難を感じやすいのかを明らかにすることで、生活や支援の方向性を見出すことが目的です。
心理検査は医療機関や心理相談センターなどで受けることができ、医師の診察と併用される場合もありますが、心理検査自体は診断を行うものではなく、診断や支援を検討する際の参考資料として活用されます
発達障害で使われる心理検査の種類
発達障害の心理検査や診断は、精神科・心療内科・発達外来などの医療機関で行われます。
心理検査は医師の指示のもと、公認心理師・臨床心理士が担当します。ここでは、主な検査の種類や費用、受診の流れについてご紹介します。
1.知能検査(IQ検査)
発達障害の検査で最も多く用いられるのが、ウェクスラー式知能検査(WAIS-Ⅳ/WISC-Ⅴなど)です。
この検査は発達障害の有無を直接判定するものではなく、認知特性を可視化するための心理学的評価です。
検査では、「言語理解」「知覚推理(非言語的な思考力)」「作動記憶(ワーキングメモリ)」「処理速度」の領域を測定します。
この結果により、全体のIQ(知能指数)だけでなく、得意な領域と苦手な領域のバランスが明らかになります。
こうしたデータは、医師が診断を行う際の参考資料として、本人・保護者・支援者が特性を理解し、生活や支援方針を考えるための手がかりとして、
活用されます。
つまり、ウェクスラー式知能検査は発達障害を「診断する」検査ではなく、
診断や支援の検討に役立つ心理学的な評価ツールといえます。
主な検査
- WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査)
成人(16歳以上)が対象。言語理解・作動記憶・処理速度などのバランスを見る。 - WISC-Ⅳ(ウェクスラー児童用知能検査)
小学生〜高校生が対象。学習面の得意・苦手が明確になる。 - WPPSI(ウェクスラー幼児用知能検査)
5〜7歳程度の幼児向け。
2.発達特性の評価検査
発達障害の種類や特性をより詳しく把握するために、以下のような検査が行われます。
- ADOS-2(自閉症診断観察検査):自閉スペクトラム症(ASD)の診断補助に用いられる観察型検査。
- AQ(自閉症スペクトラム指数):ASD傾向を質問紙で測定する。
- CAARS / ASRS:大人のADHD症状を評価する質問紙
ここれらの結果は、生活上の困りごとや行動特性と合わせて分析され、
今後の支援や環境調整の方向性を考えるための重要な情報となります。
発達障害の心理検査・診断にかかる費用
心理検査の費用は、保険適用の有無や検査内容によって大きく異なります。
- 医師の診断目的で行われる場合:「保険適用(3割負担)」となることが多い
- 自己理解や職場・学校提出用の診断書目的の場合:「自費(1〜5万円程度)」になることが多い
心理検査は1回あたり数時間を要する場合もあり、結果説明(フィードバック)までを含めての費用設定となることが一般的です。
検査を受けるまでの流れ
発達障害に関する心理検査を受ける際の一般的な流れは下記のとおりです。
- 予約・問い合わせ
精神科、心療内科、発達外来、または心理相談機関に連絡して予約を取ります。 - ヒアリング・問診
生活上の困りごと、生育歴、職場や学校での様子などについて丁寧に聞き取ります。 - 心理検査の実施
公認心理師が目的に応じて検査(WAIS、WISC、AQなど)を実施します。 - 結果説明・助言
検査結果をもとに、認知特性や今後の支援の方向性についてフィードバックを行います。
なお、医学的な診断が必要な場合は、検査結果を持参して医療機関で医師の診察を受ける流れとなります。その際は、医師が問診や行動観察などを行い、必要に応じて追加検査(血液検査・脳波検査など)を実施し、DSM-5などの診断基準に基づいて総合的に判断します。
発達障害のある大人に見られやすい特徴
大人の発達障害では、職場や人間関係で特有の困難が表れることがあります。
以下は代表的な特徴の一例です。
【ADHD傾向の大人に見られやすい特徴】
- 仕事の優先順位をつけるのが苦手で、複数のタスクを同時に抱えると混乱する
- 衝動的な言動により、対人関係でトラブルが生じやすい傾向がある
- 落ち着きのなさや貧乏ゆすりなど、多動性が残存している場合がある
- 金銭管理が苦手で、衝動買いをしてしまうことがある
【ASD傾向の大人に見られやすい特徴】
- 暗黙のルールや空気を読むことが難しく、コミュニケーションに困難を感じる
- 特定の分野に興味を持ち、専門性の高い仕事で力を発揮するケースが多い
- 感覚過敏により、騒音や蛍光灯の光などに疲れやすい傾向がある
- 柔軟な対応が求められる場面で強いストレスを感じてしまう
特性の現れ方には個人差があり、同じ診断名でも困りごとの内容や強さは人によって異なります。
心理検査を通して自分の傾向を理解することが、対策の第一歩となります。
発達障害について相談したい方は東京ハブクリニックへ
東京ハブクリニックでは、公認心理師が中心となって心理検査とカウンセリングを実施しています。
東京ハブクリニックの検査
- 心理相談外来(ADHD専門外来・メンタルテスト外来)
- 知能検査(WISC-Ⅴ知能検査・WAIS-Ⅳ知能検査)
- 心理検査(質問紙法・投影法)
また、ご希望に応じて保護者様や教育・職場関係者へのコンサルテーションも行っています。
「診断が必要かを知りたい」「自分や子どもの特性を客観的に理解したい」と感じている方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度相談にいらしてください。
まとめ
- 発達障害に関する心理検査は、公認心理師が行う専門的な心理評価であり、診断そのものを目的とするものではない。
- ウェクスラー式知能検査(WAIS・WISCなど)は、診断ではなく診断や支援を検討するための参考資料として用いられる。
- AQ、CAARS、ADOS-2 などの質問紙・観察検査を組み合わせて、認知や行動の傾向を多面的に把握する。
- 検査費用は内容や回数によって異なり、保険適用外の場合はおおむね10,000〜50,000円程度(結果フィードバックを含む)が一般的。
- 医学的な診断を受けたい場合は医療機関での受診が必要だが、まず自分の特性を理解したい場合は公認心理師による心理検査・相談が第一歩となる。

