「仕事でミスが続く」「自分の性格がよく分からない」「なぜか生きづらさを感じる」。こうした悩みの背景には、認知特性や性格傾向など目に見えない心の特徴が関わっていることがあります。
心理検査とは、知能・性格・発達・精神状態などを科学的に評価し、その人の特性を客観的に把握するための専門的なツールです。
大人の自己理解や働き方の改善、子どもの発達支援など、幅広い場面で活用されています。
この記事では、心理検査の目的・種類・代表的な検査を、専門家の視点でわかりやすく解説します。
心理検査を受ける目的とは?|悩みの整理・特性理解・治療方針づくりに役立つ
心理検査を受ける目的は、「自分でも説明しづらい困りごとの背景」を客観的に整理することです。
検査結果をもとに、仕事・学習・対人関係での困り感の理由や、今後の対処方法が明確になります。
心理検査の主な目的は次のとおりです。
- 得意・不得意を客観的に知るため
- ミスが起きやすい原因を把握するため
- 性格や感情傾向を理解するため
- 発達障害・精神疾患の診断補助として活用するため
- 仕事や学習方法の最適化につなげるため
- 適切な治療・支援方針を決めるため
心理検査は「ただ数値を見るためのもの」ではなく、自分がより生きやすくなるための実用的な道具として活用できます。
心理検査でわかること|大人の自己理解から子どもの発達支援まで
心理検査では、目に見えない心の働きを客観的なデータとして把握できます。
主に以下のような領域を評価します。
- 知能・認知機能(記憶、注意、処理速度、推論など)
- 性格特性(感情傾向、対人スタイル、ストレス耐性など)
- 発達の状態(子どもの発達段階の理解)
- 精神的な健康状態(不安、抑うつ、ストレス反応など)
大人の場合は、仕事のミスの傾向やコミュニケーションのクセが明確になるため、働き方や職業選択の改善につながります。
子どもの場合は、発達障害の有無や学習上のつまずきの原因を探索し、学校や家庭での適切な支援体制を整えることに役立ちます。
また、心理検査は医師や心理士が診断や治療計画を立てる際にも重要な情報源となります。
心理検査の種類と代表的な検査
心理検査は、評価したい内容に応じて、「知能・発達検査」と「人格検査」 の大きく2種類に分かれます。
ここでは、臨床現場で広く用いられる代表的な検査を紹介します。
①「知能・発達検査」|WAIS/WISC/WIPPSI・新版K式など
知能・発達検査は、記憶・言語・推論・注意・処理速度などの認知の力や、子どもの発達段階を客観的に評価する検査です。
代表的な検査には以下があります。
ウェクスラー式知能検査(WAIS/WISC/WIPPSI)
ウェクスラー式知能検査は、世界で最も広く使われている知能検査で、
「全体のIQ」だけでなく、4つの指標(VCI/PRI/WMI/PSI)を詳細に評価 できます。
- 言語理解(VCI):言葉の理解力・表現力
- 知覚推理(PRI):視覚情報をもとに推理する力
- ワーキングメモリー(WMI):一時的に記憶しながら作業する力
- 処理速度(PSI):視覚情報を素早く正確に処理する力
この指標間のバランス(ディスクレパンシー)を見ることで、発達特性や日常生活でのつまずきの理由が明らかになります。
● 受検年齢
- WAIS:16歳〜90歳11ヶ月
- WIPPSI:2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月
- WISC:5歳〜16歳11ヶ月
新版K式発達検査(小児の発達水準を把握する検査)
新版K式発達検査は、乳幼児から児童期までの発達を評価する検査で、以下の3領域から「発達がどの時期の水準にあるか」を把握します。
- 姿勢・運動
- 認知・適応
- 言語・社会
どの部分の発達がゆっくりなのか、どの領域が強いのかが明確になるため、療育や教育現場での支援計画づくりに役立ちます。
②「人格検査」|性格や感情傾向、深層心理を理解するための検査
人格検査は、その人の性格特性・気質・感情傾向・深層心理を理解するための検査です。
大きく以下の3つに分けられます。
質問紙法(自己回答式)
質問紙法は「はい・いいえ」などの選択肢で回答するアンケート形式の検査で、下記などが代表的です。
- YG性格検査
- MPI(モーズレイ性格検査)
統計的なデータに基づいて性格傾向を数値化できるため客観性が高い一方、回答者が自分をよく見せようと意識的に嘘をつくことが可能であるという側面もあります。
作業検査法(行動の特徴を評価する検査)
作業検査法では簡単な作業を一定時間行い、その作業量や変化の曲線から性格や適性を測る方法で、「内田クレペリン検査」が代表的です。
集中力・粘り強さ・作業のムラなどが表れやすく、意図的な操作が難しいのが特徴です。
企業の採用試験でもよく用いられています。
投影法(深層心理の特徴を捉える検査)
投影法は曖昧な刺激(インクのシミ、絵、未完成の文章など)を提示し、
それをどう解釈するかから、深層心理や感情の動きを読み取る方法で、下記などの検査が挙げられます。
- ロールシャッハ・テスト:インクのシミを見て何に見えるかを答える
- バウムテスト:木を描く
- SCT(文章完成法):文章の続きを書く
回答に正解がなく、無意識の欲求や深層心理が表れやすいのが特徴ですが、専門家による高度な解釈が必要です。
心理検査は自分でもできる?|専門家が行う検査との違い
インターネット上には性格診断や心理テストが数多く存在しますが、これらは娯楽目的のものがほとんどで、専門的な心理検査とは異なります。
正式な心理検査は、公認心理師・臨床心理士などの専門資格を持つ者が、決められた手順で実施し、正しく解釈する必要があります。
素人判断では誤った解釈につながるリスクがあるため、自分の状態を正確に知りたい場合は専門機関で受けることが大切です。
心理検査を受けたい人は東京ハブクリニックへ
東京ハブクリニックでは、公認心理師・臨床心理士の資格を持つ専門スタッフが、一人ひとりの状況に応じた適切な心理検査を実施しています。
<東京ハブクリニックの心理検査>
- 心理相談外来(ADHD専門外来・メンタルテスト外来)
- 知能検査(WISC-Ⅴ知能検査・WAIS-Ⅳ知能検査)
- 人格検査(質問紙法・投影法)
単に検査結果のレポートをお渡しするだけでなく、日常生活・仕事・学習でどう活かすかまで丁寧にフィードバックしています。
自分自身を深く理解したい方、仕事・学習・人間関係で困りごとがある方はお気軽にご相談ください。
まとめ
- 心理検査では「知能・認知機能」「性格特性」「発達状態」「精神的健康」などを科学的に評価できる。
- 心理検査は「知能・発達検査」と「人格検査」に大きく分類され、目的に応じて使い分けられる。
- 正式な心理検査は、公認心理師・臨床心理士などの専門家が決められた手順で実施し、適切に解釈する必要がある。
- 自分の状態を正確に知りたい場合は、医療機関や心理相談機関での検査が最も信頼できる。

